ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
沙奈は、まちがっていなかった。
そこにいるのは、肯定も否定もできない由香里。
……冷静になれ、冷静になれ、冷静に!
今度こそ、大事な友達を助けたい。
俺は気絶した沙奈を抱きあげ、庭に出て芝生の上へと運ぶ。
そして着ていた服を脱ぎ、もう一度家の中に戻った。
――ドタッ!
が、とたんに腰を抜かす。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
想像を絶する光景。
由香里は、すでに死んでいる今川にまたがり、燃え盛る両手で首を絞めていた。
「ヒッハッ八ッハッハッ!」
……磨理子……さん?
濃霧のような煙が充満する部屋の中、俺は彼女の姿を見たような気がした。
四肢があったなら、こうやって殺していたのだろうと。
「冷静になれ!冷静に!」
今度は声に出して、己を奮い立たせる。
俺はカーテンを裂き、由香里の身体に被せた。
そして、力いっぱい引きずる。
「ギャァ゛アー! ア゛ァァ゛アー……!!」
激しく暴れた彼女も、庭に出ると息絶えたようにおとなしくなった。
目を覚ましていた沙奈は、まだ燃えている由香里の姿を呆然と見つめていた。
「沙奈! しっかりしろ! 一緒に消すんだ!」
「……う、うん!」
腕、それから脚。ひとつずつ確実に消していく。
――ゴオォォォーーッ。パリンッ!
ついに窓の外まで姿を現す大火。
……どうする……行くのか?
意味はないんだ。それは、わかっている。でも……。
「沙奈、由香里、少し待ってて」
「敬……」
もう一度、燃えさかる家の中に身を投じる。
「浦野さん!」
彼は命を懸けてくれた。
信頼していた正義の味方を、このまま今川とともに灰にするわけにはいかない。
浦野の脇の下に手を通し、残った力を振り絞る。
「ぬ゛うああ゛あぁー!」
迫りくる炎から間一髪で脱出した。
「ハァッ、ハァッ、ン゛ッ」
……由香里!
「由香里! 由香里、大丈夫か!?」
すぐさま駆け寄ると、焼けただれた腕の皮膚に、ほんの少しだけ指先が触れる。
それだけで、肉はめくれた。
もし一命を取り留めたとしても、きっと手足の切断は余儀なくされるだろう。