ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】



やがて見えてきたのは、警視庁の本庁。

「ここだ、さぁ入って」

ねずみ色の壁が取り囲む部屋に、鉄格子のついた窓から月が見えた。

その壁と向かい合う女性は、目の前に置いたPCから視線を一切外さない。

あらかじめ決まっていたかのように、浦野がパイプ椅子に座って、俺と対峙する。

初めての取調室。

いや、むしろ最後にしたい。

妙にソワソワし、友達を救えなかったことで逮捕までされるのだろうか?と思ってしまう。

ただ俺が萎縮しているだけなのかもしれない。長い沈黙を経たあと、車は警視庁に着いた。

古い建物は、どこかなつかしさすら感じる空気だ。

俺の取調べを担当するのは宇治木。

彼がパイプ椅子に座ろうとするそのとき、先に質問をぶつけたのは俺だった。

「あの、彼女は?」

「キミより前に、となりの取調室に入ったよ」

「そうですか……」

俺の心情を悟ったのか、宇治木はおだやかな顔で言う。

「心配するな! 女性の刑事が担当してる。その方が萎縮せず話せるだろう?」

「…………」

「さて! あの家でいったい、なにがあった?」

「…………」

「今川の死体があることもキミらは知っていたのか?」

「…………」

身の潔白を証明するためには、”伊達事件”というキーワードは必要不可欠。

だが、どうしても言葉にできない。

……この人も今川と同じだったら……。

『お前らは知りすぎたからや』

あの言葉が頭の中を駆けめぐる。

ひたすら黙秘を続ける俺に、彼は身の上話で攻めてくる。

「僕はね、いつもこれを持って現場に行くんだ」

そう言ってポケットから取り出したのは……。

「弾……?」

まじまじと見て、ようやくわかった。

……あの日に見たのは金属製のドングリじゃない。

「うん。新米のときに、初めてコンビを組んだ先輩がいつもポケットにコレを入れてて……」

「…………」

「もちろん聞いたよ。”なんで、そんな物を持ち歩いてるんだ?”って。そしたら、”俺は生涯現場主義を貫くつもりだが、ひとつだけ信念がある。一度も銃を抜かないことだ。もしこの弾を装填して撃つ日が来たら、俺が刑事を辞める日だ”って」

「えっ!?」

目頭が一瞬で熱くなる。


 
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