ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】



「敬太……、バイバイ」

沙奈は車を降りるときそう言った。永遠の別れを予感させるような辛辣な表情で。

たったひと晩で、あらゆる悲劇を目の当たりにしたが、今夜にはそれがまた訪れるかもしれない。

次は……沙奈だ。

「…………」

俺は言葉を返せなかった。

勇気付けるセリフを放つ資格も、気力すら残っていない。

「ただいま」

静まり返ったリビングでひと息つき、ようやく気付く。

……独りだ。

思い返せば、佑美の最期の夜から、ひとりの時間はほとんどなかった。

「……う゛ぅ、ッズ! う゛あ゛あぁー」

誰も見ていない今、強がりの糸がプツリと切れる。

「ごめんっ! みんな、ごめん……」

4人の笑顔が走馬灯のようによみがえり、俺は初めて声をあげて泣く。

……誰ひとり守れなかった。

後悔どころか、全員の最期に触れている自分自身を、まるで死神じゃないかと罵る。

そして、延々と頭を巡っているのは……もしも、沙奈が死んだら……という、最悪のシナリオ。

痛い、切ない。

会いたい、でも会えない。

そばにいたい、でもダメだ。だって、俺は死神なのだから……。

せめぎあう葛藤。どうか、そのシナリオが絵空事で終わってほしいと願う。

――♪ピンポ~ン♪

「…………」

――♪ピンポ~ン♪

「……ン゛?」

俺は飛び起きて、時計を確認する。

「3時!?」

知らないうちに寝ていたらしい。

時間を見てぎょっとし、血の気が引くような衝撃に襲われる。

が……。

「ハァ~」

……よかった……。

窓の外は明るかった。

――♪ピンポ~ン♪

寝起きの俺は、いろいろな場所に身体をぶつけながら玄関へ。

そこにいたのは、

「やあ!」

と弱々しい笑顔を浮かべる宇治木刑事。

すぐに彼をリビングに案内する。

彼は俺たちを見送ったあと、すぐに鑑識に頼み、遺留品である浦野の愛用していた手帳を入手したという。

「キミが伝えたかったのは、コレだろ? この中にすべてが詰まっていたよ」

今川への疑惑、警察の陰謀、そして全国で発生している連続不審死事件の捜査情報。

浦野の歴史がそこに刻まれているらしい。

「ここへ来た目的は、連続不審死を止められるかもしれない”鍵”を、キミに渡すためだ」

「ゴクッ……」

俺は思いがけない転機に息をのむ。



 
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