ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
生ぬるい風さえも肌を刺すように感じるのは、恐怖で身体が萎縮しているからだろう。
闇の中にそびえる大きな樹木。
その正面に立つのは、沙奈。
4日前、ここですべてが始まった。
あの日は川本くんが木の正面に立ち、『ダルマさんが転んだ』と、磨理子を呼んだ。
今でも鮮明に覚えている。
沙奈も同じなのだろう。
「やっぱり怖い……敬太……怖いよ」
極度の緊張で限界に達した沙奈の膝が折れる。
「大丈夫、俺がとなりにいるから!」
肩をさすり、抱き寄せた。
だが、うずくまる沙奈は、このゲームでは皮肉にも好都合。
座って行うこと、というのが、この呪いのゲームのルールなのだから。
今ならわかる。
おそらく、座るのを条件にしたのは、立ちあがることのできない磨理子への配慮だろう。
――♪ピピピッ、ピピピッ♪
アラームをセットしておいた携帯が激しく震える。
3時3分。
ついに迎えた、このときを。
今にも泣きだしそうな沙奈の小指と、ほぼ感覚がなくなった俺の小指を絡ませる。
強く、とても強く結んだつもりだ。しかし、感覚としてはもう捉えられなかった。
「沙奈……? 時間だよ」
「ぅ゛……」
「少しの勇気で、俺たちは死なずにすむんだ」
俺だって怖い。
自分にも言い聞かせるように言った。
「う゛ぅ……ッ゛」
俺ひとりでは力不足だった。
皆の力を借りるしかない。
「川本くんや小泉、佑美に由香里、みんなの死を忘れないためにも俺たちは生き続けなきゃ。そうだろ?」
「…………」
沙奈の顔つきが変わる。
「……う゛ん、私、やる!」
そうは言ったものの、たったひと言なのに、唇は震えてためらっていた。
「だ、だ……るまさんが……転んだ」
だが、やっと聞こえた。
鈴虫にも負けてしまいそうなほどの小さな呪文。
しかし……。磨理子にはそれで十分。