ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
「も、もしかして……キミたちはヤバイ所と揉めたのか!?」
俺の思考を遮るように出血を押さえる箇所を凝視しながら運転手は問う。
「ちがいます! 俺たちはそんなんじゃ……」
「だって、ふたりとも小指……ケガしてるんじゃないか?」
「そうですけど……」
こんなにも早く、俺たちが背負わなければならない宿命に出会うとは……。
「参ったなぁ……」
運転手の額には汗が滲んでいた。
多分、夏の汗ではなく、俺たちを避けたい一心の冷や汗だろう。
強引な追い越しに、信号無視。カーブではタイヤが鳴く。
横暴な運転にも、それが表れていた。
――キイイィッ!
結果、たった5分で救急病院に着く。
「ありがとうございます! お釣りはいり……」
「お金はいらない」
目を合わさぬよう、前を見たまま運転手は言った。
「え!?」
すると今度は、目だけを見て懇願する。
「俺には妻も子供もいる。普通の人間なんだ。料金はいらないから、俺が関わったことを忘れてくれ! 頼む! 頼むから……」
「…………」
車内で必死に頭をさげた。
彼の目には、俺たちがヤクザと関係があるように思えたのだろう。
「そういうわけには……」
後部座席にそっとお金を置き、再び沙奈を支えて、タクシーを降りる。
すると、ドアを閉める時間も待たず、そのまま逃げるように去っていった。