ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
馬乗りになり、何度も何度も拳を振りおろす。
「す、すう゛みません!」
「娘に、一生の……グスッ、一生の傷を背負わせたんだぞ! 貴様が! 貴様が! 娘に……」
「本当に゛すみません!」
「お父さん! もうやめて!」
「お前は黙ってろ!」
父親にすがるように止める母親も、振り払われる。
ひどく痛い。顔も、手も。
だが、大切な友達を失った悲しみに比べたら耐えられる。それに、沙奈も俺も、とりあえずは死なずにすんだのだ。
これくらい、どうってことない。
俺は歯を食いしばって耐え続けた。
「やめましょう! ね、お父さん」
「落ち着いて!」
数人の職員に羽交い絞めにされ、拳の雨はやんだ。
「ハァ、ハッ……娘にン、娘に二度と近付くな! わかったか!?」
「…………」
俺はなにも言えず、強い眼差しを返す。
「貴っ様……」
再び高く振りあげられる拳。
「せめて!! せめて……沙奈が目覚めるまで、そばにいさせてください!! お願いします、お願いします……」
床に頭をつけ、土下座をした。
好きな気持ちに変わりはない。誓った言葉に偽りだって……。
しかし磨理子は、小指だけでなく、俺たちふたりの運命までも断ち切っていた。
その現実を受け入れるしかない。
「……クソッ」
俺の右手から滲み出る血を見つめて、父親は冷静さを取り戻したようだ。
「土下座なんかしても許さねぞ、お前が同じ通り魔の被害者でもな! 守ったつもりでいるかもしれんが、お前が娘を夜中に連れ回さなきゃ、こんなことには……」
父親はくやしさを込め、固く握ったままの拳を壁に打ちつける。
「……目が覚めるまでだ! それ以降はない! いいな?」
「は、はい……ありがとう、ございます」
病室のベッドで眠る沙奈に会うことを許された。
意識が戻らない理由は、過度のストレスが原因だと医師が言っていた。
ここ最近の出来事、彼女の性格からすれば、こうなって当然と言える。
「沙奈……」
とても、おだやかな寝顔。
俺は横に座り、髪を撫でながら見つめていた。