ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
そんなある日。
「やぁ! 元気?」
俺のことを気遣ってくれる宇治木刑事はたまに家に様子を見にくる。
そして、いろいろと”事件のその後”を教えてくれた。
俺たちも巻きこまれた不可解な連続不審死事件は、全国でまだまだ増え続けているらしい。
同時に、小指を失う若者も爆発的に増えていた。
“終わりの儀式”に辿りつかなかった者に待ち受けるのは死。
だが、生きながらえた者に待ち受けるのは、現実だ。
「そうそう! あのふたりなんだけど……」
あのふたりとは、最初の生き残りだった長谷川菜摘と前原ことみのことを指す。
今は双方、行方不明らしい。
前原ことみにいたっては、愛犬との散歩に出たまま忽然と消えたという。
俺には、ふたりの気持ちがよくわかる。
この世の者じゃない存在に怯える日々が終わっても、今度はこの世の者が恐ろしくなる。
たとえば、無垢な子供が、
「あの人、小指ないよ!」
と叫び、連れ添う親が血相を変えて何度も謝ってくる。挙げ句に周囲もコソコソ、なんてことが日常茶飯事だ。
傷を隠す手袋は必需品だし、できることならどこか遠くへ逃げたい。
大切な者や物を連れて、誰もいない場所へ……。
だから、ふたりの失踪を宇治木から聞いても、まったく不思議ではなかった。
……あ、そういえば。
前原ことみの名前を聞いて思い出す。
サホという名の正体だ。
ちなみに、俺のときは……忘れてしまった。
あれは、なにを意味していたのだろう。
……ま、いっか。
もう終わったことだ。
今となってはどうでもいい。
それに、もうひとつの謎である顧客リストも、ただのでっちあげだとわかった。
「僕も調べてみたけど、顧客リストの存在はないに等しいかな。供述調書にもそんな事実は書かれていなかったし、ただの脅しだよ」
「そうですか……」