ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】



俺はそのことを磨理子の母親に伝えにいくことにした。

もちろん、日記を携えて。

「これは役に立ったかしら?」

同じ病室で会う彼女は、とても不安そうに言った。

「えぇ! 貸してくださって、ありがとうございました。すごく役に立ちました!」

本当に、この日記がなかったら、呪いのゲームを解く”鍵”に気付けなかっただろう。

「礼なんて……私は言ってもらえる立場にないわ。とにかくあなたが無事でなにより! ……でも、女の子は?」

「ぁ……」

そのとき、俺は手袋をした右手を背中の方に回した。

「今日はち、ちょっと体調が悪いらしくて!」

「そう……残念ね」

言う必要はないだろう。小指も沙奈も、両方失ったなんて……。

彼女も十分傷ついた人だから、これ以上哀しい気持ちにさせたくはなかった。

「そんなことより、もう一度確認するけど、本当に顧客リストは見つからなかったのね?」

「ぇ、えぇ……」

瞬時に対極の表情に変わる母親。

これまでが”陽”なら、今の彼女は”陰”だ。

「そ~う……これまた残念ね」

……わ、笑ってる?

言葉では表せないような違和感。

彼女の心には、とてつもなく深い闇があるような気がした。

しかし、そんなものは誰にだってある。

今の境遇に陥ったから、きっと、より強く感じるんだ。

「また来てくれる? 私には身寄りがいないから、さびしくて……」

「もちろんですよ! 月に一度ぐらい通っちゃおうかな」

「本当!? すごくうれしいわ!」

まるで、我が子を見送るように大きく手を振る母親。

日記を返したことで、肩の荷がおりたように身体が軽くなる。

同時にそれは、真の空虚な心と闘う日々の始まりだった。



 
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