ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
沙奈と会えなくなって1ヶ月が過ぎた。
手の傷は癒えても、彼女がいない哀しみは、いまだ癒えぬまま。
何度も会いにいこうとした。
何度も作り直しては消す、メールの文章。
このまま、“初恋の想い出”として終わらせていいのか。
そんな自問自答の繰り返し。
そのたびに、強く思うようにしている。
俺は沙奈のことが好きなんじゃない。
沙奈のことが好きな自分が好きだったんだって。
こう思い込ませて、気持ちをどうにか鎮めていた。
たしかその日は、季節外れの台風が迫る夜。
日付が変わろうとする時刻に、突然家のチャイムが鳴った。
……俺には関係ない。
あの事件以来、妙に優しくなった家族に任せ、変わらず部屋で天井とにらめっこ。
すると、
「けーた! けーーた!」
下から、俺の名前を呼ぶ母の声。
「チッ、なんだよ……」
ちょっとした怒りを原動力にして立ちあがる。
だらしない格好のまま階段をおりると、
「え!? な、なんで……」
そこには、切なげな瞳を向ける沙奈がいた。
「沙奈……」
愛しさのあまり、ただ見つめるだけで幸せを感じる。
「敬太! ごめんね……」
その言葉を発したとたん、沙奈は身体ごと俺に飛びこんできた。
「……あらまぁ!」
母さんはクスクス笑っている。
「と、とりあえず、部屋に行こう!」
俺は強引に沙奈の手を引いて2階へとあがった。
――バタンッ。
「「…………」」
ドアを閉め、密室になったとたん、急に気恥ずかしくなる。