ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
そこには、なにもなかった。
黒い塊や、引きずった跡すら。
すべてが幻であったかのように消えていた。
そして、川本くんの姿も。
――カチッ。
俺はとっさに携帯を開き、電話をかける。
《……お掛けになった電話は、現在、電波の届かない場所に……》
……つながらない……。
時刻は3時15分。
もう一度……。
《お掛けになった電話は、現……》
「チッ」
何度かけても、結果は同じ。
「そうだ!」
彼の家はここから近い住宅地にある。
「川本くんの家、行ってみるか?」
「こんな夜中に? 迷惑だろ」
「……だよな」
たしかに、こんな時間に押しかけるのは非常識すぎる。
小泉に諭され、冷静さを取り戻した。
「自分だけ家に逃げ帰ったんじゃねぇの? 明日学校で会ったら説教だな。ぁ、もう今日か」
「…………」
……そうかもしれないな。
小泉の言うとおりだと思い込むことで肩の荷がおり、公園を出た。
が、結局、川本くんが見つからなかったことには変わりない。
みんなになんて言うべきか。とくに沙奈へ。
それを考えながら、俺は無言で歩いた。
コンビニまで戻ると、
「どうだった?」
由香里が、まっ先に問う。
「いなかったよ。多分、家に帰ったと思う」
俺は推測でしか答えられない。
「電話は?」
沙奈も聞いてくる。
――カチッ。
俺はもう一度携帯を開き、リダイヤルする。
《お掛けになった電話は……》
「何回掛けても繋がらない」
その言葉がみんなの表情に暗い影を落とす。
どうにか搾りだそうとしても、俺は元気づけるセリフを見つけることはできなかった。
こんな状況を打開してくれたのは……。