ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】



「おい! みんな起きろ!」

あわてて、みんなを叩き起こす。

「ん~、敬太ぁ……どうしたの?」

「アイツが、川本くんが大変なんだ!」

背中をつーっと冷や汗がつたう。

「えぇ~……あっ! もう始発出てるじゃん。帰ろっ!」

寝ぼけたような声の由香里は、俺の言葉にお構いなしで忙しく荷物をまとめだした。

「そ、そうじゃなくて! 川本くんが……大変なこ、ことになってるんだよ!!」

焦る言葉も、空回りする。

「はあ~?」

どうやら、眠る前の出来事は夢の彼方に消えてしまったようだ。

急に騒がしくなったからか、小泉と沙奈も続けて目を覚ます。

言葉を詰まらせながらも、俺は必死になって状況を説明するが、寝起きの彼らにはうまく伝わらない。

みんなの目的はたったひとつ、”電車に乗ること”だ。

「だーかーらー! お前は心配しすぎなんだってば!」

「そうだよー。もう朝だもん。今頃、川本くんもグーグー寝てるって!」

小泉も由香里も沙奈さえも、まともに聞く耳を持たない。

「ちがう! お前らが能天気すぎるんだよ! な、聞いただろ? 佑美からもみんなに言ってくれ」

あの声を聞いた佑美になら、わかるはず。

期待を込めて見つめた。

「んー……、川本くんがふざけてただけじゃないの?」

「ッ!?」

……ダメだ。

「さぁ、早く帰ろっ!」

由香里の言葉に、みんなが眠たい目をこすりながら立ちあがる。

俺は自らに言い聞かせていた。

電話から聞こえてきた声は、幻聴だったと。

川本くんはただ、駅のホームにいただけだと。

それでも、耳に残るあの言葉。


《ツギハオマエダ!!》


……あれは俺のことを指しているのか? それとも……?

「あれ? ない……なぁ、誰か、俺の携帯知らない?」

小泉はポケットやカバンを漁る。

「やっと気付いた?」

「佑美! 隠してたな!?」

「だって、私の目の前に落ちてたんだもん」

……この携帯の持ち主を指しているのか……?

気になった俺は、みんなを送りがてら駅まで一緒に行くことにした。



 
< 31 / 161 >

この作品をシェア

pagetop