ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
「えぇっ!? 朝っぱらから人身事故だって! マジありえないんだけど」
自動改札機を通ったとき、由香里の言葉が耳に飛びこんできた。
「え!? 人身事故? まさか……」
『線路で寝てた』と言っていた川本くんの声がよみがえる。
電車の警笛も……。
電光掲示板の赤い文字は、現実を示していた。
《只今、人身事故の影響で、運転を見合わせております。新しい情報が入り次第お知らせいたします。繰り返……》
「俺、ちょっと行ってくる」
「ぉおい! 敬太! どこ行くんだよ!?」
ただならぬ胸騒ぎに、小泉の声も無視し、みんなを置き去りにして改札へと走った。
――ピー――。ガッ!
はやる気持ちを落ち着かせようとするように、改札機の扉が閉まる。
「すみません! 乗るつもりでしたが、やっぱり出ます!」
勢いよく言った俺に、駅員は顔色ひとつ変えず処理をした。
その時間さえ、もどかしい。
「人身事故があったのは、どっちの方角ですか!?」
「……あぁ~、あっちですね」
あわただしく階段を下り、線路沿いをひた走る。
切れる息。おびただしいほどの汗。頭をよぎる最悪の光景。
10分ほど走ると、長い直線のレールの先にビニールシートの青い海が広がっていた。
その脇に、灯台の明かりのように回るパトランプ。
早朝にもかかわらず集まった、たくさんの野次馬たち。
それらを見た途端、怖くなり、走るのをやめる。
線路上を隈なく調べているのは鑑識だろうか。左手に黒いゴミ袋、右手には銀色の真新しいトングを持っている。
……なにしてんだ……?
そのとき、俺は見つけてしまった。