ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
「こ、これ……」
道路の端、名も知らぬ雑草に隠れた破片。
ニスが塗られた光沢のある木材。
「ギター!? まさか、川本くん……の?」
野次馬たちの話す声が聞こえる。
――ヒソヒソ。
「若い兄ちゃんだってよ。自殺か? 手足が吹っ飛んだらしい……悲惨ねぇ」
――ヒソヒソ。
「嘘だ……ちがう、絶対に!」
……こんなの、悪い夢に決まってる!
とっさに足先の向きを変えた。
向かったのは、彼の自宅。
走って行ける距離ではある。
だが、彼の存在自体は、遥か遠くに感じた。
無理やり陽気な妄想を引っぱりだす。
彼はきっと寝癖のついた髪で出迎えてくれる。
「心配しすぎなんだよ!」
と言って笑い飛ばしてくれるはず。
……あ、そうだ、言おう!
この際、言ってしまおう。
「俺は沙奈が好きだ」って。
それを伝えに今から行くんだ。
しかし……。
閑静な住宅街に数台の警察車両が見える。
彼の家の玄関先で、50代の女性が警察官と話をしていた。
……川本くんの母親?
「すみません……」
「キミは!?」
「俺は、川本くん……川本将昌くんの友人です。いったいなにがあったんですか?」
その言葉が起爆剤になったかのように、女性は泣き崩れ、警察官は無線でなにかを話す。
と、すぐに家の中から、ふたりの男が出てきた。
警察手帳を見せながら、
「僕は浦野、コイツが今川、ちょっとだけ話を聞かせてくれる?」
と下手な笑顔を浮かべる。
その浦野は、いかにもベテラン刑事の雰囲気を醸しだしていた。
一緒にいる今川は少し小柄で、一見すると普通の青年のようだ。とても刑事には見えない。
「ハナシ?」
「キミの友達、最近、悩んでる様子はあった?」
「……いいえ。それより彼になにが!?」
ふたりは顔を見合わせ、無言で小さくうなずく。
長い付き合いなのか、言葉がなくとも意思の疎通ができるらしい。
「線路に侵入してね、電車にはねられて……」