ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】



自分の家へと帰り、制服に着替える。

何度もボタンを掛けちがえたのは、落胆と動揺を表しているからだろう。

――トッ、トッ、トッ、トッ。

「敬太! どこ行ってたの? っていうか、いつの間に、帰ってきたの!?」

「…………」

俺は玄関で学校指定の革靴を履く。

母は俺の背中に怒声を浴びせ続けた。

「遅刻じゃない! 家業を継ぐからって甘えは通用しないのよ! ねえちょっと! 聞いてんの!?」

「…………」

そこまで言って、いつもとちがう俺の様子にやっと気付く。

「……アンタ、18才でクールなキャラに転身しようってんじゃな……」

「いってきます」

「え、ちょ、っと! 敬太ぁー」

今の俺には、母の相手をする気力もない。

ゆえに、みんなから川本くんについての電話が来ないのは救いだった。

ポケットから取り出した携帯。

……当たり前か。

どのボタンを押しても、画面はまっ暗なまま。

そう、電池が切れていたことをすっかり忘れていた。

「よかった……」

これで自分の口から彼の死を告げなくて済んだのだから……。



 
< 36 / 161 >

この作品をシェア

pagetop