ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
自分の家へと帰り、制服に着替える。
何度もボタンを掛けちがえたのは、落胆と動揺を表しているからだろう。
――トッ、トッ、トッ、トッ。
「敬太! どこ行ってたの? っていうか、いつの間に、帰ってきたの!?」
「…………」
俺は玄関で学校指定の革靴を履く。
母は俺の背中に怒声を浴びせ続けた。
「遅刻じゃない! 家業を継ぐからって甘えは通用しないのよ! ねえちょっと! 聞いてんの!?」
「…………」
そこまで言って、いつもとちがう俺の様子にやっと気付く。
「……アンタ、18才でクールなキャラに転身しようってんじゃな……」
「いってきます」
「え、ちょ、っと! 敬太ぁー」
今の俺には、母の相手をする気力もない。
ゆえに、みんなから川本くんについての電話が来ないのは救いだった。
ポケットから取り出した携帯。
……当たり前か。
どのボタンを押しても、画面はまっ暗なまま。
そう、電池が切れていたことをすっかり忘れていた。
「よかった……」
これで自分の口から彼の死を告げなくて済んだのだから……。