ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】



「おーーいっ!」

深夜だろうと関係ない。

大声で叫び続けた。

「大輝ぃーーっ!!」

こんなときに、初めて名前を呼んだ。

今がそのタイミングなんて微塵も思っちゃいない。

俺たちはバカをやって、大人になったらその思い出を”若気の至り”のせいにして、腹を抱えて笑い合うハゲたオヤジになる。

そう、これからなんだ。

アイツを今、絶対死なすわけにはいかない。

「大輝ーっ! 聞こえたら返事しろ!」

しかし、懸命の呼びかけもむなしく、大通りにも路地裏にもいない。

俺は必死で走る。目が回りそうなほど、辺りを見渡しながら。

やがて大通りにぶつかり、歩道橋を駆けあがる。

すべての方角を見落とさないように、ジグザグに進むと……。

「あっ!」

25mぐらい先。

アイツは路側帯に呆然と立っていた。

まるで魂を抜かれたみたいに無表情で。

「おい! おーっい!!」

反応なし。

距離が遠くて声が届いていないのか。

すると……。

「な!? なにやってんだよ」

小泉は横断歩道でもない場所を渡りはじめた。

深夜とはいえ、そこは国道。

車は忙しなく行き交っている。

「あぶない!」

      ――ブアアァーーーンッ!

こだまするクラクションにも一切動じず、フラフラと歩く奇怪な行動に、俺の視線は釘づけとなっていた。

そして、ちょうどセンターラインの上で歩みを止める。

双方から鳴るクラクション、車は小泉の前後スレスレを猛スピードで走り抜け、彼の長い前髪が揺れた。

身体の向きを変え、小泉はゆっくりとこちらを見あげる。

静かで冷酷な視線。
不敵にニッコリと笑って手を振る。
今まで見たこともない、妖しい微笑み。
力のない指先。

……俺の知っているアイツじゃない?


 
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