ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】



「お、おい! な、なにやってんだよ!」

次の瞬間、突然その場に寝転がった。センターラインを背にして、まるで大草原にいるかのように手を大きく広げて。

「やめろー! 小泉!!」

右車線、前から大型車が迫っている。後方からも同じ距離に2tトラック。

「ふざけんなっ!」

俺は全速力で歩道橋の階段を駆けおりる。

一刻の予断も許さないこの状況。

――ブアァーーーンッ!

その刹那。

――グチュ―ッ、ビチッ……。

かつて聞いたことのない音がした瞬間、

「う゛わ゛あぁあぁっ!」

断末魔の叫び。

目の前で起きた惨劇に腰が抜けて、俺は階段を転げ落ちた。




      ゴロンッ。




すぐさま、俺の視野の中になにかが転がってきた。

「っっつ゛!?」

血まみれの……、

「うわああああーーー!!」

切断された腕。

車道には主を失った足が転がり、他にも肉の塊が見えた。

「あ゛あ゛あ゛あ゛ー!」

小泉の悲鳴が俺に自我を取り戻させる。

俺は流れの途絶えた車道の中へ飛びこむ。

「小泉っ!」

「い゛てぇ、痛てぇよ! たずげでぐれ゛ーっ!」

四肢を引き裂かれても、彼の意識はあった。

だが、辺り一面、血の海。

「だ、大丈夫か!? い、今、救急車呼ぶから!」

握りしめていたはずの携帯。

「あれ……」

……ない。きっと階段のどこかだ。

「う゛ぅうう゛……」

膝下から夥しい量の血が溢れ出ているポケットから小泉のケータイを掴み、震える手で番号を押す。

『もも、もしもし!』

冷静さなど保てるわけもなく、声は激しく震えた。

『お願いします! 救急車を! 急いでください!』

『…………』

『聞こえてますか!? も、もしもし!?』

『…………』

ただならぬ違和感。



《フフフフッ――  ハハ八ハッハ!》



ぞっとする声に、記憶が鮮烈によみがえる。



 
< 52 / 161 >

この作品をシェア

pagetop