ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
「なにしてるの?」
沙奈が俺の右肩から顔を出す。
あまりにドキッとして、思わずのけぞってしまった。
「……ご、ごめん」
俺の反応に、少し顔をしかめ、もとの体勢に戻る沙奈。
「……ううん」
今、誤解を解くためにも、”好き”という言葉が必要。
……言え、言うんだ! 俺。
だが……。
「ぁ、掲示板にあった名前を、もう一度探してみようかなって!」
「そぅ」
……言えない。
ありったけの勇気を今使ったら、フラれたときに立ち直れない気がするから。
……友達のままでもいい……。
そう思ったとき、沙奈の唇に心を奪われた。
気持ちを即座に揺り動かす、瑞々しい唇……。
無性に、それが誰のモノなのか確かめたくなった。
「なぁ……川本くんのこと、好きだったよね?」
「…………」
目を伏せる沙奈。途端に答えを聞くのが怖くなる。
「ご、ごめん! 仲よさそうだったからさ……もしかして、みんなに内緒で付き合ってたのかな?って」
「……敬太は? 佑美のこと、……好き?」
が、俺よりも不安げな顔をして、そんな風に聞き返される。
「えっ!? 俺はただ……いろいろと相談してるだけ」
「そうなの!? じゃあ私と同じだ!」
沈んでいた顔が、春を待ちわびた花のような笑顔に変わる。
「か、川本くんのこと好きじゃないの!?」
思わず身を乗りだす。
「もちろん、友達としては好きだよ! ただ、私、川ちゃんに相談してたんだ、恋愛のこと」
「恋愛……? たとえば?」
「う~ん。たとえば……相手のことを心から好きだって実感したときは、少しシャツを引っぱるといいよって、川ちゃんが教えてくれた」
「シャツを? 引っぱる?」
……なんのために?
「そう。私、初めて人を好きになったから、どうやって伝えていいか、わからなくて……それをしたら、もともと相手も気があれば100%オチるし、ドのつくほどの鈍感なヤツじゃない限り、好意に気付いてくれるよって」
「……ぁ」
俺はそれを聞いた瞬間にハッと思い出す。
……つい最近、そんなことがあったような……。
すると沙奈は視線を外し、恥じらいながら言う。
「その人ね、”ド”のつく人だったみたい……」