ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】


「ぁ、ぇ、ウソ! え!? まさか……沙奈の好きな人って……オレ?」
勢いで口走った言葉に、彼女はうなずく。

「沙奈……」

衝動的に、抱きしめたいと、そう思った。

だが、俺は高揚しきった心を一度落ち着かせて、スッと小指を差しだす。

「……約束する」

「ぇ? なにを?」

「俺、沙奈のこと絶対に守るから!」

「……うん。信じてる」

固く交わされる小指。

俺たちは同じ気持ちを抱いたまま遠回りをしていた。

「「……フッ」」

そういう失敗だけは、笑ってすませばいい。

だが……幸せな時間はそう長く続かないもの。

「み、見てる……」

沙奈は怯えながら扉の上を凝視していた。

時刻はまだ0時前。

あの時間まで、ほど遠い。

……まさか!? そんなはずは……。

恐るおそる視線の先を辿る。

と、そこには……。

「お前らー!」

つい声を荒らげてしまった。

キャッキャとはしゃぎながら隠れる佑美と由香里。

――ガラガラッ。

俺は立ちあがり、ブースを出る。

「のぞいてんじゃねーよ!」

「ごめん、ごめん。……でも、よかったじゃん! なんか安心した」

佑美のはにかむ笑顔。これも大事な友達として、守りたいモノのひとつ。

しかし、沙奈がいる手前、俺は素直になれなかった。

「うるせぇ! 人の心配してる場合か?」

ぶっきらぼうに返す。

「……でもさ、今日はたくさん人がいる場所にみんなでいるんだから、大丈夫でしょ!」

ふたりは辺りを見回している。

「ま、まぁ……な」

由香里の言うとおりだ。

ティーパックを選ぶ若い女の子に、成人誌をまじまじと選ぶ未成年、イチャイチャしているカップル……。

ネットカフェは盛況だ。

……ここじゃさすがに、なにも起こらないだろう。



 
< 70 / 161 >

この作品をシェア

pagetop