ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】



「ハッ……ハッ……ハァ……」

ビルの角を曲がったとき、視線の先に、へたりこむ女性の姿があった。

……佑美!? ……ちがう!

「どうしたんですか!?」

すぐさま駆け寄って問いかけた。

女性は顔を歪ませながら、震える人差し指を前方に突きだす。

「ヒィ、ひ……人が落ちてきた」

「え!?」

彼女が指差す先は、月光も遮断された路地裏の中心。

そこに、たしかに黒いシルエットが見える。

だが、それを”人”だとは思えなかった。

……この感覚……。

「まさか、あの女!?」

デジャヴにも似たトラウマに、俺は一瞬だけ身を引く。

しかし、黒い塊はピクリとも動かない。

「ちがう……?」

恐るおそる歩を進めた。

徐々に露になるその正体。

丈の短いスカート、赤いバラをあしらったシャツ。

……いや、バラじゃない。

それは、血に染まった親友……。

「佑美ぃ!!」

目の前に横たわっていたのは、絶望だった。

すぐさま抱き起こそうと手を伸ばす。

だが……。

どこにも触れることができない。

なぜなら、佑美の手足からは、いくつもの骨が飛びだしていたからだ。

じわりと流れ出る深紅の液体が彼女の身体から広がり、さらに地面を濃く染めてゆく。

第一発見者の女性はすでに救急車の要請をしていた。

……止血、とにかく止血しなきゃ!

「け゛、い゛た……」

「佑美……」

かろうじて、彼女は意識があるようだった。

「あ゛たし……あたし……」

「今はしゃべるな! すぐに救急車が来る!」

本当は薄々感づいていた。

その言葉が最期になるだろうと。

聞きたくなかった。

俺には荷が重すぎて。佑美を失うなんて、受け入れられなくて……。

「ほん゛と……は」

……やめてくれ!

「佑美! 助かったらいくらでも、どんなにくだらなくても聞いてやるから! いつもみたいにさ……。だから頼む! 今は俺の言うことを聞いてくれ」

「…………」

彼女は少し笑って、小さくうなずいた。



 
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