ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】



10分後。

――ガシャンッ。

「まだ生きてる! すぐに搬送だ!」

いつの間にか救急車が到着している。

「キミ! 離れて!」

隊員が慣れた手つきで佑美の身体をストレッチャーへ乗せ、俺もあとを追うように救急車に乗りこむ。

しかし、1分……2分……。

車体は動かない。

「なにやってんですか!? 早く病院に!」

佑美の意識はもうない。

予断を許さない状況に、隊員へ食ってかかる俺だったが、

「……どこも満床で搬送先が見つからないんだ」

申し訳なさそうに答える彼に、俺もそれ以上なにも言えなかった。

電話を掛けては切りの繰り返し、そのたびに「ここもダメか」とうなだれる。

……そんな。佑美がこのままじゃ……。

焦るばかりで、俺にはどうすることもできない。

結局、15分が経過しても動けず。

――ピー……。

聞きなれない一定の高い音にハッと顔をあげた。

途端に、隊員と目が合う。彼は静かにこう言った。

「……キミはもう降りていいよ」

「…………」

心肺停止を告げる音が、なにを意味するか。

それは佑美がもう、友人の励ましを必要としない存在になったということ。

――バタンッ。

「…………」

急ぐ理由もなくなり、救急車はサイレンを鳴らさず去っていく。

――ヒソヒソ。
「女だってさ エグッ……」
「自殺? ヤバくない?」
      ――ヒソヒソ。

いつの間にか外はパトランプに囲まれていて、そんな声が耳に飛びこんできた。

……黙れ……。

――ヒソヒソ。
「恋愛のもつれじゃない?」
「じゃ、あれって彼氏?」
  ――ヒソヒソ。

「黙れー!」

「「…………」」

俺の叫び声が、まだ夜も明けていない街に響き渡る。

許せなかった。

俺たちのことをなにも知らない他人に、好き勝手言われることが。

そして、なにより……不甲斐ない自分自身が。



 
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