ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
俺は、またも助けられなかった。
下には降りず、上へ向かっていたら、佑美を救えたかもしれないのに。
……俺のせいだ。
「「敬太!」」
散らばりはじめた人だかりの中に、沙奈と由香里がいた。
俺は、現実から目を逸らすように顔を背ける。
「今、救急車から降りてきた……よね?」
駆け寄ってきた由香里は覇気なく問いかける。
「…………」
「血だらけ! ケガしたの?」
「…………」
沙奈は俺のことを心配していた。
「佑美が……」
俺は今、どんな表情をしているのだろう。
「……ウ、ウソでしょ? ね? ふたり、いつも、ふふざけてるから、ね?」
きっと言葉など必要ないほどの落胆ぶり。
由香里は俺の腕を取って激しく振った。
その必死な瞳に、俺は首を横に振ることができない。
「キミが飛び降りて亡くなった子の友達だね?」
警官が近付いてきて、そう言った。
その形式的な問いかけで、由香里は泣き崩れる。
「イヤ゛……ウソだ! ウソでしょ!?」
俺は由香里から目を逸らす。
……こういうことを伝えるのは、慣れている人に任せた方がいい。
沙奈が由香里の身体を支えようとしたが、無駄だった。
「イヤだ……ゅみ……イ゛ヤァ゛ーー!」
俺はしゃがみこんで由香里をなだめる。
「ごめん……由香里」
「イヤだイヤだイヤだイヤだ」
「ここじゃアレだから、あのパトカーの中で話をしましょう……」
半狂乱の由香里を、警察官がふたりがかりで支え、パトカーの後部座席に乗せる。
まん中が沙奈、俺は反対側のドアから最後に乗った。
由香里は顔を伏せたまま。
狭い車内の中で、心の距離も遠く離れている気がする。
そんな俺たちを繋ぐように、沙奈は右手を由香里、左手は俺に添えてくれた。
そのぬくもりに傷ついた心が癒される。
……知らなかった。
こんなにも彼女が大きくて強い存在だなんて。
「とりあえず、このバッグなんだけど、なにか、なくなっている物はないかな? もしあるなら……」
話した内容はよく覚えていない。ほとんど沙奈が答えていたと思う。
俺はまだショックから覚めやらず、とても質問に答えられるような状態ではなかった。
結局、警察の見解は最初から最後まで自殺の線で揺らがぬまま。
当然、誰も”呪い”なんて言葉は発さぬまま……。
「また話を聞くかもしれないから、そのときはよろしくね」
――バタンッ。
俺のうしろで、パトカーのドアが閉められた。