ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
「どうして俺に、この病院の存在を?」
「うん。彼女は事件が発覚するまで、小学校の教諭をしていた。だから面会者リストにも、ときどき教え子が載っていたりしたんだ」
「まさか!?」
「そう! キミがその教え子になりすます」
「っんな、うまくいくわけありませんよ!」
……発想が突飛すぎる。
だが、本人は至って真剣らしい。
「大丈夫! 面会中の監視さえ遠ざければ、きっと話を聞けるはずだ」
「…………」
言いくるめられるとは、まさにこのこと。
「どうだい? 今から、行ってみる気はあるか?」
この言葉で火がついた。
……なんの手がかりも見つけられていないんだ。これに賭けるしかない!
ただひとつの懸念があるとすれば……。
俺は、天井を見つめた。
「ひとりにしたくない子がいるんです。彼女も一緒なら……」
「……そうか、わかった。車の中で事情を話せばいい」
「はい! ありがとうございます」
部屋に戻り、沙奈の肩を優しく叩く。
ゆっくり瞼を開いた彼女は、途端に驚いた表情を見せた。
「やぁ!」
笑顔のぎこちない見知らぬおっさんが声をかける。
「驚かせてごめん。この人たちは刑事さんだよ。今から出掛けるけど……沙奈も一緒に来る?」
「……ぇ? ……ぁ、え!?」
薄手のブランケットで顔を隠しながら、必死でこの状況を飲みこもうとしていた。
俺は、そんな愛らしい沙奈の頭を撫でながら、
「車の中で説明する。準備して!」
と発破をかける。
「……は、はい」
あわてて起きあがる沙奈。
階段の下で、刑事たちも再び靴下を履こうとしていた。
「革靴だと、すぐに臭くなるよな!」
「靴のせぇにしたらあきまへんって!」
「そうか?」
まるで漫才のような息の合ったコンビに、
「使ってください」
と言って、俺は新品の靴下を渡す。