ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
中をのぞいてみると、まっ先に捉えられたのは、白い塗装の鉄格子。
その向こうで、ぼんやり座っている女性がひとり。
「面会だ」
警備員の言葉にハッとして俺たちを見る。
――キイィ。
ドアが静かに開けられた。
……よし! やるしかない。
「佐伯先生ぇー! ……ぁ、今は兵藤先生か。お久しぶりですー」
思惑どおり、背後の男はあの紙に一瞬目をやった。確認したのだろう、彼女の旧姓を。
「先生、全然変わってなーい! ねぇねぇ、元気だった!?」
沙奈は今まで聞いたこともないような甲高い声で再会の喜びを演出する。
「……え、えぇ。私は元気よ」
この言葉を彼女が発したとたん、案内役の警備員は来た道を戻っていった。
「フゥ~……」
安堵の息を吐く俺。
「ご、ごめんなさい……やっぱり、ちょっとふたりのこと思い出せないわ。お名前は?」
中指でこめかみを押さえながら、申し訳なさそうに言う。
「こちらこそ……、すみません」
同じ顔つきで、沙奈とふたり深々と頭をさげた。
「教え子っていうのはウソなんです。こうでもしなきゃ会えないと思って……」
「……なんの目的で?」
眉間にシワが寄り、一歩後退する。あきらかに不審がっていた。
「娘さんのことです。どうしても、お話をうかがいたくて」
「記者? 警察の方?」
「いいえ、ちがいます」
「じゃあどうして?」
「それは……」
どこから説明していいかわからない。
単刀直入に、”娘さんから呪われています”なんて言えるわけもない。
……そうだ!
語らずとも理解してくれる物がある。
俺はポケットから携帯を取り出した。
「これを見てください!」
あの画面メモを目の前に差しだす。
「4日ほど前に友人がサイトでこれを見つけて、冗談半分で、書かれているとおりのことをやったんです」
「…………」
興味を惹いたのか、彼女は俺の携帯を両手で受け取った。