ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】



2011年の冬。
一度に行うのは闇医者の技量や設備を考えても、かなりリスクが高く、命を落とす危険性があった。
そのため、たった1ヶ月の間に4度の四肢切断手術が行われたという。
磨理子の目が覚め、容態が安定したら、またひとつ斬り落とし、縫合。
それを繰り返した。
意識が戻るたびに身体が失われてゆく喪失感と、絶望。
だが現実は、さらに残酷なものとなる。
手術が終わると、次は食事すら満足に与えられない監禁生活が待っていた。
もはや身動きさえ取れない中での孤独と恐怖の中、一度彼女は舌を噛んで死のうとしたらしい。
以降、夫である敏也は、磨理子に24時間監視をつけた。
それは、死も許されない生き地獄の始まり。
日ごとに痩せ細り、日増しに髪の毛は抜け落ちてゆく……。
そんなある日、監視役の組員のひとりが磨理子をレイプしたことが発覚。
それを偶然目撃した敏也は、ひらめく。
磨理子を使い、狂った性癖の持ち主を相手に商売をしようと。
闇の情報は、瞬く間に広がった。
客足は滞ることを知らず、磨理子は毎日数人の男に弄ばれた。
無慈悲な、約半年間。
最後には、もはや磨理子は喘ぐことも、泣くことも、嘆くことも一切しなかったらしい。
表情ひとつ変えず、獣たちをじっと見つめ、『オマエヲノロイコロシテヤル』と延々つぶやいていたそうだ。
ようやく保護された、2012年の1月27日。
連絡を受けた母親が病院に着いたとき、彼女の意識はほとんどなかった。
精神的苦痛、肉体的苦痛、その両面ですでに限界を超えていたのだ。
そして……。
鬼畜から解放された、33日後の2012年2月29日。
4年に1度しかない特別な日の、午前3時。
磨理子は、息を引き取った。
だが、生命維持装置を取り外そうとしたそのとき……時間にして3時3分。
再び、心臓は動きだした。
瞬間、その場にいる誰もが感じ取ったという。
彼女には、こんな身体になってもなお、”生きたい”という強い意志があるということを。
医学的見地からすれば、その心拍はとても弱々しいもの。
だが、人の心には大きく響いた。
そして……30分後の、3時33分。
彼女は、鼓動をやめた。



 
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