夏の桜が咲く。

それから 家に帰る頃には

あれから何時間かたった頃だった

ガチャン…

出来るだけ音を立てずに

自分の部屋に入った

するとそこに、ポツンと置かれた

キャンパスがあった

近くに行って見てみると

鉛筆で薄く描かれた

大きな桜だった。

「お父さんだ…っ」

思わず 部屋の外に出た

お父さんはどこだろ

お母さんには会いたくないから

出来るだけ小さな音で

庭に出た

「お父さんっ…」

「梨桜…」

久しぶりにちゃんと見たお父さんは

とても小さくなっていた

「絵… 桜の絵お父さんだよね?」

「あぁ、そうだよ 梨桜に謝りたいと
思ってな…本当今まですまなかった」

「何で急に?」

溢れそうな涙をこらえながら言う

「ずっと謝りたかったんだよ」

「いいよ。別にお父さんは」

「お母さんの事はこれからどうにか
していこう…」

「うん。」

お父さんが 涙を堪えている

私を抱きしめた

「本当にすまなかった…
こんなヤツ父親失格だよな…
もし、許してくれるなら許して欲しい」

「うっ…うぇっ…ふぇ…っ」

力強く頷いた

久しぶりに 父親の暖かさを知った

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