イジワル王子と屋根の下



「引っ越し費用は」

「向こうが持ってくれて、敷金礼金もいらないって」

「ほー…完璧な条件じゃねえか」

「……」

「で?何て答えたんだよ」

「…少し、考えさせてほしいって、言った」

「……」

「……」



少しの無言。

それを打ち破るようにこぼされたのは、はぁ…と一つの溜息。



「…何考える必要があるんだよ」

「…?」

「そんないい条件あるなら、ここ出て行く以外の選択肢はねえだろ」

「……」



出て行く以外の選択肢は、ない?


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