「約束」涙の君を【完】
文化祭の帰り道、
祥太の自転車の後ろに乗っていたら、
うちへ向かう途中で、違う道へ入った。
「祥太?」
「ちょっと、寄り道して行こう」
祥太はしばらく自転車を走らせると、
草むらの前で止まった。
そして、私の手を引いて、
草むらの中に入って行った。
この先は、お父さんの研究所で、
柵に沿って歩くと、
ひまわり畑だったよね。
そう思いながら、歩いて行くと、
「わぁ…………」
ひまわりで黄色一面だったひまわり畑のところが、
ピンク一色に染まっていた。
「秋はコスモスになるんだよ」
よく見ると、淡かったり、濃かったり、
ピンクでもいろんなピンク色のコスモスが風に揺れていた。
「じゃあ……冬は?」
祥太は、あはははっと笑った。
「冬は雪で真っ白だよ」
「そうなんだ……」
「でも、土の中には、球根がいる」
「きゅうこん?」
「春になったらわかるよ」
春………
「その時も一緒に見られるよね」
祥太は私の頬を撫でた。
「一生そばにいんだろ?」
私がゆっくり頷くと、祥太は目の前で大好きな笑顔を見せた。
「じゃあ……何回も見れんじゃん……」
祥太は撫でていた頬から、下ろした髪に指を通すと、少しずつ目を伏せながら、
私の顔に近づいてきた。
「好きだよ……優衣」
吐息がかかるほど近くで言われて、
そっと目を閉じると、
柔らかく、激しい……
祥太のキスを受け止めた。
夕焼けで真っ赤に染まった秋の空の下、
ピンク色のコスモス畑
私は、祥太との永遠を信じた。