織姫サマはご乱心

攻防の末
しゅんとしたアルタイルは隅で小さくなっていじけている
それが嫌でもベガの目に入ってきてため息を吐いた


「…あと少しで終わるから」
「ほんとに!?」

ぱぁぁと目を輝かせたアルタイルはさながら子犬のようであった

だがこれでも星の精霊としては一目置かれている存在である
…信じられないかもしれないが!事実は事実だ


「アルが目障りでしょうがないから切りのいいところまでやるだけよ」
「…よく言いますね、それ急遽入ってきた仕事で今日の分はとっくに終わらせていたじゃありませんか」

まったく、素直じゃないんですから、とシェリアクが続けた言葉に
アルタイルはにやにやと意地の悪そうな笑みを浮かべ
ベガは苦虫を噛み潰したような顔でそっぽを向いた


「俺と会う時間作るために早く終わらせようとしたんでしょ?」
「…知らない、さっさと帰って」
「そんなに帰ってほしいなら俺帰るよ?残った仕事部下に押し付けて来ちゃったからね」

仕方がないとでも言いたげに肩をすくめたアルタイルはそれだけ言うと本当に帰るつもりなのか、出入り口の方へ向って歩き出した


「…待ちなさいよ、アルタイル」

その言葉にアルタイルが振り向くと、顔面めがけて何かが飛んでくるところだったので、慌ててそれを掴んだ

紙袋に包まれた小さなそれは中身が何かは見当がつかない
…だが、その中身について確実に一つ言えることがある

「賄賂よ。今年もまた1年お願いしますね」

…それはベガからアルタイルに向けた“プレゼント”だと言うことだ


「奇遇だね、俺もベガに“賄賂”があるんだ」
つかつかと耳まで真っ赤に染めたベガの目の前まで歩み寄ると、アルタイルは片手で顎を上向かせ、もう片方で後頭部を支えるようにしてベガの唇にかぶりついた

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