意地悪な彼が指輪をくれる理由
「いや、まあ。実は考えてたりする」
瑛士は少し照れた顔で笑った。
彼のこんな表情は見たことがなかった。
……なーんだ、そうなんだ。
そりゃあ私たちだって今年で28だし、そういう相手がいてもおかしくはない。
だけど、私には結婚の予定どころか彼氏さえいないから、もうしばらく成長した瑛士にときめきたかったのに。
現実に引き戻された私は少し残念な気持ちで「相方スイッチ」をオフにして、「ビジネスモード」に切り替えた。
「私、ジュエリーショップで店員やってるんだ」
「ジュエリーってことは、指輪とか売ってる?」
瑛士は身を乗り出し食いついて来た。
本気度は高いらしい。
「もちろん。エンゲージリングも扱ってるから、今度見に来てよ。気に入ったのがあったら社割り価格で売ってあげる」
「マジ? 真奈美にしては太っ腹じゃん」
「一言多いっつーの」