意地悪な彼が指輪をくれる理由

「いや、まあ。実は考えてたりする」

瑛士は少し照れた顔で笑った。

彼のこんな表情は見たことがなかった。

……なーんだ、そうなんだ。

そりゃあ私たちだって今年で28だし、そういう相手がいてもおかしくはない。

だけど、私には結婚の予定どころか彼氏さえいないから、もうしばらく成長した瑛士にときめきたかったのに。

現実に引き戻された私は少し残念な気持ちで「相方スイッチ」をオフにして、「ビジネスモード」に切り替えた。

「私、ジュエリーショップで店員やってるんだ」

「ジュエリーってことは、指輪とか売ってる?」

瑛士は身を乗り出し食いついて来た。

本気度は高いらしい。

「もちろん。エンゲージリングも扱ってるから、今度見に来てよ。気に入ったのがあったら社割り価格で売ってあげる」

「マジ? 真奈美にしては太っ腹じゃん」

「一言多いっつーの」

< 8 / 225 >

この作品をシェア

pagetop