もっと傷つけばいい
沈黙。

2人で、ただ黙って飲んでいた。

先にその沈黙を破ったのは、
「――家出か?」

ソウの方だった。

「――えっ…?」

そう聞いてきた彼に、あたしは驚いた。

何でわかったの?

ソウに会ってから、あたしは家出の“い”の字も言っていない。

「その大荷物を見れば」

あたしの頭の中を見抜いたと言うように、ソウが言った。

あたしは目を伏せた。

「理由は言わなくていい」

そう言われて、あたしはすぐに目をあげた。
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