もっと傷つけばいい
「それは…僕が何者かを知りたいと?」

そう聞いてきた彼に、
「いや、何者かとかそんなんじゃなくて…」

あたしは首を横に振って否定した。

「本当は、あったんだろ?」

「――えっ…」

何があったって言うの?

「5年前の、僕らの写真があったんだろ?」

ソウが言った。

…どうして、知っているの?

ソウは胸ポケットから何かを出した。

黒革の手帳だった。

それを開くと、ソウは透明なポケットの部分を指差した。

「いつもここに入れて持ち歩いているんだ」
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