もっと傷つけばいい
「もういいですか?

人を待たせているんです。

急ぎます」

そう言ったあたしに、
「おとと、ちょっと待ってくれよォ」

先を急ごうとしたら、前から中年男に通せんぼをされた。

「別に話をしてくれたっていいだろう?

君がどうして“谷渚”を名乗っているのか、おじさんに教えてくれたっていいだろう?」

…こいつ、一体あたしをどこまで知っているって言うの?

ニヤニヤと笑う中年男に、あたしは太刀打ちができない。
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