【完】ダンデライオン
マグノアの辛そうな表情は、変わることはなかった。
『女王は、だんだん眠る時間が長くなり目覚めなくなる病だったんだが………起きている時は、私によく話していた。』
そういえば、国王は魔法を調べるためにこもりっきりになっていたと聞いた。
「マグノアは、ずっと女王の側にいたの……?」
『……女王が起きていらっしゃる間はな。』
きっと国王が部屋にこもりっきりになっている間も、マグノアは女王のそばに、ずっと寄り添っていたんだろう。
「女王は、何て言ってたの…?」
『………そうだな、女王は…』
マグノアは、遠い昔のことを思い出す。
遥か昔……幸せだったころのこと。
優しい夫婦と子どもがいるお城に住んで、誰もがマグノアがニンゲンであるかのように扱ってくれた。
次第に女王は病気であることが分かり、眠っている時間が多くなった。
彼女が目覚めたことを気配で確認すると、女王の部屋に入っていく。
すると、優しい笑顔でいつも迎えてくれる。
そして、眠る前の会話の内容を忘れるのか、いつも同じことを言う。
「ねぇ、マグノア……。別れは悲しいことだけれど、きっといつか…あの人にも分かってくれる。出会いがあるから、別れがあって…それには全て意味がある。私は、そう思うの。」
マグノアの頭をゆっくりと撫でる優しい指。
そして、悟っているかのような、優しい声。
「でも……あの人と、エルノのことは心配だわ…。ねぇ、マグノア、お願い。あの二人のことをよろしくね。あなたが、一番シッカリしてるから。」
もう、50年以上昔の記憶なのに………忘れることは出来ない。
マグノアは思い出を閉じ込めるように、そっと目を閉じた。