実は、彼女はご主人様でした。
本来の桜雪に体を戻すことが今の桜雪の願いだというのなら、真人はそれ以上のことは言えない。言葉を遮り、願いを口にする桜雪に真人は口を閉じた。


なぜ焦る必要があるのかも分からない。


真人は桜雪の問いかけに答えた。



「当然残るよ。自分の彼女に好意を持っているなんて、イライラする理由には十分でしょ」

「…そうか。分かった」



って欲しくなかった、これが桜雪の本音だったに違いない。

けれど、真人が言った理由も、本心だった。


自分の彼女に好意を持っている人と会うのに、ヒラヒラと手を振って見送る彼氏がいるわけもない。


しかし、桜雪の言う“厄介”とはどういうことだろう。


いつもなら呼び出しに着いて行ったとしても何も言わなかった桜雪が拒否をしている。

巻き込みたくなかった…?

そういうことなのだろうか。

それほど“厄介”ということなのだろうか。

なら、尚更一人で会わせるわけにはいかない。
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