実は、彼女はご主人様でした。
「俺は桜雪の隣にいればいいの?」

「真人は…そうだな…掃除用具入れにでも隠れていてくれぬか。私だけで何とかしようとは思うが、正直、私はお前が心配だ。いいか、私でどうにか出来なくなった時だけ助けてくれ」

「…?分かった…」



念を押された真人は、納得のいかない一方的な言い分に渋々従い、掃除用具入れに向かった。

部活で使われている様な一人用のロッカーの中に、教室一室分を掃除するに足りる道具たちが収納されている。真人は何とか一人入れる程の隙間を作ると、その中に隠れ潜んだ。


真人が隠れ、桜雪は自分の席に座った。


外は夕暮れ、陽が落ちるのも遅くなった季節だが、時間はいつもと同じように回り、他の教室に残っている生徒はほとんどいない。声は聞こえるが、遠く感じる。隣の教室に至っては静か以外何も感じない。


真人が掃除用具入れに隠れてから十数分の時が流れ、残っていた生徒も帰り、校舎全体が静けさに包まれた頃、桜雪の待つ教室に一人の教師が現れた。



「すまん。まだ仕事が片付かなくてな。待っていてくれて嬉しいよ」



この教室以外にも2クラス受け持っている英語教師だった。
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