実は、彼女はご主人様でした。
狭い掃除用具入れの中にいた真人は、先生の言葉を受け、少々苛立ちを覚えた。

けれど、特に秀でたものもない以上、その言葉は本当のことだとも言える。

言われる屈辱はあるけれど、それをどう打開したらいいのか分からない。

真人は静かに溜め息をつき、桜雪の出方を待った。



「私は彼と出会うために今ここにいるんです。って、出会ったんですけど」



心臓が掴まれたように痛む。


桜雪の言葉が話の流れから出たと言うことは分かっている。だけど、本心ではない言葉にしても、真人の心を打つには十分な愛の言葉だった。


思わず顔がほころぶ。



「はいはい、俺ね、人の惚気なんてどうでもいいの。ね、そんな平凡な男子生徒なんかほっといて俺と付き合った方がお得だよ。なんてったって社会人だからね。高校生のデートよりも上のランクな付き合いができる。体験したくない?」

「別に。興味ありません」

「ちっ…面白くないな。じゃ、とりあえずキスさせてよ。そしたらもう止めにする」

「意味が分かりません」

「何も収穫なしなんて、俺ここに来た意味ないでしょ」

「………先生…」
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