実は、彼女はご主人様でした。
「次は父親だ」

「え、でも…お母さん…」

「いいんだ。父親の負の感情を取って、また母親の負の感情を頂く」

「分かった」



どこかを力なく見ていた父親と目を合わせ、真人は父親の既視感を呼び出した。


そして再現された既視感は、一言でいえば“お金”、それだけで埋め尽くされた映像だった。

優雅にソファに座り、笑顔の母親が数種類の茶菓子を用意して、コーヒーを入れている。家の中は高価な美術品で華麗に仕上げられ、数ある家具も高価なものだと分かるくらいの雰囲気を持っていた。


見た目は今と変わらないが、映像の中にいる父親と母親の表情は危機感が全くなく幸せそうな感じがする。


そんな幸せそうな雰囲気の中、桜雪の姿が見えない。

真人は目を凝らすが、どこにもいる気配がなかった。



「君は桜雪を探しているのか?残念だが、そんなに探してもいないよ」



真人の疑問に答えたのは、桜雪ではなく、このビジョンの当人である父親だった。


いつもなら呆然とビジョンの当人たちは見ていたが、父親は話す余裕があるのか、真人と向き合っている。

驚いたが、真人はすぐに自身を落ち着かせ、父親と話をした。
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