四竜帝の大陸【赤の大陸編】
「……りこ」

顔を隠していたハクの手が、指が。
ゆっくりと動き、黄金の瞳が露わになり。 
四本の指を持つ小さな手が。
私へと、伸ばされる。

「りこ。我のりこ」 

真珠色の鋭い爪を気にしてか。

「<赤>がなぜここで待っていたのか、りことて分かっておるだろう? あれは我が再びりこを傷つけることを危惧し、りこを貪ろうとする我を抑える『道具』として自分自身を使ったのだ」

その手は私の頬に、触れる直前で。 

「我が他の者を壊すのを、りこは喜ばない。皆、それを知っているゆえ……」

ぎゅっと、握られて。

「そうだ。知っているのだ、皆。四竜帝は……竜族も人間も。我のこの手が、我が」

まん丸に、なった。

「我のこの手が。我という存在(もの)は“守るもの”ではなく“壊すもの”なのだと、本能で知っているのだ」

いまだに貴方は、その小さな手を握りこむ……。
鱗に覆われた四本指の手は、私のこの手の中に収まるほど小さく可愛らしいのに。
その可愛らしい手が、私はこんなにも愛おしい。

「……この手が、“壊す手”だっていうの? そんなこと……そんなこないよ?」

丸められた手が、私の頬に触れて。
彼の震えが、肌から伝わってくる。

「私はハクのこの手が、大好き。小さくて、可愛くて、綺麗で……優しい手だもの」
「……」

この震えは、貴方の気持ち……想いであり、心。 
ハクは……とても、すごく、怖がりな人だから。



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