四竜帝の大陸【赤の大陸編】
「術士を相手にするのは、僕とクロムウェルの仕事だ。導師(イマーム)は逃がさない、仕留めてみせる。だけど、シャゼリズ・ゾペロまでは手が回らない」

僕一人で導師(イマーム)の相手をして、クロムウェルをバイロイトとコナリ達の護衛に回すという手もある。
シャゼリズ・ゾペロ程度の術士など、クロムウェルの敵じゃない。
でも、僕は目の届く範囲にクロムウェルを置いておきたいんだ。
短時間だろうと、僕はクロムウェルに別行動をとれと指示する気は無い。
僕は、クロムウェルを生きて帝都に帰すのだから。
婿殿と、約束した。
他を犠牲にしても、僕はクロムウェルだけは必ず残す。

「あいつが逃げるために転移したならいいんだけど。そうじゃなかったら」

あの契約術士は、雇用者を術式では傷つけられない。
バイロイトがあの術士としたその契約は、双方の合意が無ければとけない拘束力の強いモノだ。
あいつを身近で監視しておくために、術士を雇用するに当たって最高額が要求されるそれを陛下はバイロイトに……ま、支払いは陛下だから金額は問題じゃない。
いざって時、腕力勝負なら竜族であるバイロイトがシャゼリズ・ゾペロに勝っている。

「もしシャゼリズ・ゾペロが事務所に現れたら、殺せ」

術士に不利な分、高額な契約は万が一の時、シャゼリズ・ゾペロが動いた場合にバイロイトに危害を加えられないようにする保険だった。
シャゼリズ・ゾペロが手出し出来るのは、幼竜のあの子達。

「!? 殺すことは無いでしょう!? 保護を求めて事務所に現れる可能性がっ……」
「アイツ、きっとコナリ達の竜珠を狙うよ? 僕が見たところ、導師(イマーム)はアイツの『支配者』だ。竜族(こっち)につくとは考えられない」

導師に頭を掴まれ、振り回されていた時。
シャゼリズ・ゾペロは、『支配』されているモノの目をしていた。
それは崇拝でなく、恐怖によるもの。
強い恐怖心は、正常な判断を捻じ曲げて奪う。

「……それはっ」

陛下はバイロイトに、あの子達を守らせるためあるモノを特別に持たせていた。

「竜珠は命が消えると同時に体内で散って、回収が難しくなる。効率良く取り出すために、あいつらは禁術を使って生きたまま竜族の身体を裂いて臓腑を漁るんだ」

僕は知っている。
バイロイトの上着の下にあるモノを。
それはシャツの上から装着され、脇の下へと固定されている。
皮製の拳銃嚢(ホルスター)。

「死ぬ気はあるって言ったよね?」

拳銃嚢に収められているのは、黒の大陸の銃。
人間が人間を殺傷するために作り出した、武器。

「その死ぬ気を、殺す気に変えろっ!」

複列弾倉のそれは、15発を撃ち出せる。
それだけの回数を撃てるのだから、数発は当てられるはずだ。

「セ……レスティス。わ、私は……私にはっ」
「バイロイト、お兄。剣を扱えないお兄のために、陛下が<黒の竜帝>に頭を下げてまでそれを手に入れて持たせている意味、分かっているだろう?」
「……えぇ、分かっています。私は、コナリ達を守らなくてはなりません」



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