四竜帝の大陸【赤の大陸編】
コナリ達、か。
僕としては、帝都でバイロイトを待つ妻子の元に生きて帰るためと言って欲しかった。
バイロイトは本来なら竜族の『表』だけを知っていればいいのに、母親が竜帝だったために『こちら側』を多少知ることになってしまった。
そのせいか……つがいや子のことより、『竜族』全体のことを考えてしまう傾向が強い。
愛する伴侶との未来すら切り捨てようとする、雌至上主義の竜族の雄としてはとして異常なまでの責任感の強さ。
僕にはそれが、先代の青の竜帝セリアールの呪いのようにさえ思えてしまう。
個ではなく、皆のために自らを捧げ。
今ではなく、未来のために犠牲を強いる。
母親の四竜帝としての生き方を傍で見て育ったバイロイトは、肉体的には普通の竜族なのに精神的には……。
「……ったく、クソババアの阿呆めっ」
黄泉にいる『主』に悪態をつく僕に、その息子は眉を寄せた。
僕が“クソババア”と呼ぶ対象が誰のことか、付き合いの長いバイロイトは知っている。
「セレ?」
「……お兄、いい? 心臓は難しいだろうから、ここを……頭部を狙うんだ。一発でも当たれば十分だから。シャゼリズ・ゾペロは術士だけど肉体的には普通の人間と変わらない。あいつに弾を避ける事なんてできやしないさ」
シャゼリズ・ゾペロ程度の術士には、弾丸を防ぐほど強力な障壁を張るのは難しい。
「ここに、ど真ん中に当てなくてもいいんだ。できる?」
僕はバイロイトの眉の間を、指で押した。
「は……はい」
はい、と答えながら。
そこには隠しようも無い、迷いがあった。
「……あのね、陛下は<監視者>を説得できなかったんだ。彼はこの件に協力する気が無いそうだから、シャゼリズ・ゾペロの脳はもう必要ない。ふふっ……遠慮無くふっ飛ばしていいよ。見るの嫌だったら、目を瞑ってね」
婿殿はちょっと痛めつけて……拷問して吐かせればいいと言ってたけれど。
そういうとこ、やっぱりまだまだ青いんだよね。
痛みと恐怖で引きずりだした答えが、正しいなんて保証はどこにも無い。
<監視者>を使ったほうが、確実だった。
まぁ、あの人にやる気が無いならしょうがない。
無理強い出来る相手じゃない。
「セレスティス……なぜ、貴方は笑えるのですか? それが<竜騎士>に生まれた者とそうでない者(わたし)との違いなのですか!?」
情に揺れるバイロイトの問いは、僕には無意味。
問いかける瞳を包む哀しみは、僕にはなんの価値も無い。
「さあね? 僕には分からないよ」
「セレ、セレスティス。貴方は、ミルミラを失ってからの貴方はっ……」
「ん? なあに? 言っていいんだよ、バイロイト」
バイロイトが飲み込んだ言葉を。
「僕、狂ってるのかな? 自分じゃ、分からないんだ」
僕が拾って、舌先で転がし味わってから放つ。
「セレスティ……ス」
バイロイトから数歩離れ、僕はクロムウェルに声をかけた。
「クロムウェル、転移よろしく」
「はい、団長殿」
クロムウェルの額を流れる汗が、瞬時に湯気となって蒸発した。
障壁を維持しながら転移の術式を展開したことで、体内にある術力の<基点>にさらなる負荷がかかったためだろう。
「セレスティスッ、待っ……!」
転移寸前にこちらへと伸ばされた手を、僕はぎゅっと握った。
この僕の手ではなく。
心の中で、ぎゅっと握った。
僕としては、帝都でバイロイトを待つ妻子の元に生きて帰るためと言って欲しかった。
バイロイトは本来なら竜族の『表』だけを知っていればいいのに、母親が竜帝だったために『こちら側』を多少知ることになってしまった。
そのせいか……つがいや子のことより、『竜族』全体のことを考えてしまう傾向が強い。
愛する伴侶との未来すら切り捨てようとする、雌至上主義の竜族の雄としてはとして異常なまでの責任感の強さ。
僕にはそれが、先代の青の竜帝セリアールの呪いのようにさえ思えてしまう。
個ではなく、皆のために自らを捧げ。
今ではなく、未来のために犠牲を強いる。
母親の四竜帝としての生き方を傍で見て育ったバイロイトは、肉体的には普通の竜族なのに精神的には……。
「……ったく、クソババアの阿呆めっ」
黄泉にいる『主』に悪態をつく僕に、その息子は眉を寄せた。
僕が“クソババア”と呼ぶ対象が誰のことか、付き合いの長いバイロイトは知っている。
「セレ?」
「……お兄、いい? 心臓は難しいだろうから、ここを……頭部を狙うんだ。一発でも当たれば十分だから。シャゼリズ・ゾペロは術士だけど肉体的には普通の人間と変わらない。あいつに弾を避ける事なんてできやしないさ」
シャゼリズ・ゾペロ程度の術士には、弾丸を防ぐほど強力な障壁を張るのは難しい。
「ここに、ど真ん中に当てなくてもいいんだ。できる?」
僕はバイロイトの眉の間を、指で押した。
「は……はい」
はい、と答えながら。
そこには隠しようも無い、迷いがあった。
「……あのね、陛下は<監視者>を説得できなかったんだ。彼はこの件に協力する気が無いそうだから、シャゼリズ・ゾペロの脳はもう必要ない。ふふっ……遠慮無くふっ飛ばしていいよ。見るの嫌だったら、目を瞑ってね」
婿殿はちょっと痛めつけて……拷問して吐かせればいいと言ってたけれど。
そういうとこ、やっぱりまだまだ青いんだよね。
痛みと恐怖で引きずりだした答えが、正しいなんて保証はどこにも無い。
<監視者>を使ったほうが、確実だった。
まぁ、あの人にやる気が無いならしょうがない。
無理強い出来る相手じゃない。
「セレスティス……なぜ、貴方は笑えるのですか? それが<竜騎士>に生まれた者とそうでない者(わたし)との違いなのですか!?」
情に揺れるバイロイトの問いは、僕には無意味。
問いかける瞳を包む哀しみは、僕にはなんの価値も無い。
「さあね? 僕には分からないよ」
「セレ、セレスティス。貴方は、ミルミラを失ってからの貴方はっ……」
「ん? なあに? 言っていいんだよ、バイロイト」
バイロイトが飲み込んだ言葉を。
「僕、狂ってるのかな? 自分じゃ、分からないんだ」
僕が拾って、舌先で転がし味わってから放つ。
「セレスティ……ス」
バイロイトから数歩離れ、僕はクロムウェルに声をかけた。
「クロムウェル、転移よろしく」
「はい、団長殿」
クロムウェルの額を流れる汗が、瞬時に湯気となって蒸発した。
障壁を維持しながら転移の術式を展開したことで、体内にある術力の<基点>にさらなる負荷がかかったためだろう。
「セレスティスッ、待っ……!」
転移寸前にこちらへと伸ばされた手を、僕はぎゅっと握った。
この僕の手ではなく。
心の中で、ぎゅっと握った。