四竜帝の大陸【赤の大陸編】
「指が無いなら手の肉を裂いて、針金かなんかで骨に刀を固定すりゃいいだけだ」
「ね? ミカだって同じよ。何の問題ないでしょう?」
「……ったく、あんだろうが! 相手を殺すためだけに闘うのなら、それでいい。でもな、殺しじゃなく技量をみるのが目的だろう? そんなんじゃ、どうしたって計測精度が落ちる」

 ミカは竜騎士には珍しいくらいの慎重派だから、殺さないように手加減し過ぎることになるだろう。
 結果、その術士の限界ラインを見極めることは難しくなる。

「契約術士の"お試し”は、赤の竜騎士団の団長の役目だって決めたのはダルフェ、貴方でしょう?」

 俺が団長になる前は、"お試し”をしてなかったからだろーが!

「……じゃあ、黄の大陸に移動するまで団長に短期復職する」 
「また、そんな勝手なことを……ヴェルヴァイドに青の大陸へ転移させられた貴方が、つがいを見つけたから赤の大陸には帰らないって宣言して、副団長だったクルシェーミカが団長になって……周囲に貴方と比較され続けて、あの子も大変なのよ?」

 そんなのいちいち言われなくても、俺だって分かってる。

「…………<色持ち>の俺と普通の竜騎士のミカを比べることが間違ってるし、無意味なんだよ。もともとのスペックが違うんだ。これは努力でなんとかなるほど、甘いもんじゃねぇ」

 そう。
 どうにもならない。
 <色持ち>の俺がどんなに望んでも、他の竜族のように長くは生きられないように……。

「あの子もそれを理解しているし、昔からが貴方に心酔しているから比べられて光栄ですなんて言って、暢気に笑っていられるのよ? それがあの子の良いところだけれど、もうちょっとこう覇気が欲しいのよね……」
「ミカは向上心はあっても野心とか誰かを妬むとか、そういうのねぇからな。……母さん。今回を最後にするから、俺に任せてくれないか?」

 元はといえば、俺の短慮が招いたことだ。
 次の契約術士を見つけてから始末すべきだったのに、あの馬鹿の言動にイラッとしてポイ捨てしちまった俺が悪い。

「ダルフェ……"お試し”で絶対に殺さないって、約束できる?」
「あぁ、できる」
「術士協会に所属している正規の術士を殺したら、今度こそ術士協会に弾劾にかけられるわよ?」

 俺は『仕事』で術士を殺し過ぎて警告をくらってたし、出頭要請があっても無視してたからなぁ~。
 だが、術士協会としては正直言えば俺がごみ掃除してくれたって内心じゃ喜んでいたはずだ。
 罰則があろうが、実際には術士協会では違法術士に対処しきれす、危ない奴等が野放し状態だからな。
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