不機嫌な果実
「い、苛めてたわけじゃ」

私を叩いた張本人は、アタフタしてる。


「じゃ、何でコイツの顔、真っ赤なの?」

「それは・・・」


「コイツとオレはただの幼なじみ。

アンタらが疑ってるような関係じゃねぇ。

コイツ苛めんの止めろ」

・・・

流石にこの時だけは、

流石の私も、血の気が引いた。

凌也のあまりにも冷たい眼差しが、

あまりにも怖かったから。


「りょう・・やさ」

「コイツ苛めていいのは、オレだけだから。

だから、今度見つけたら、ボコボコにしてやるから」


言葉は残酷なのに、

其れとは全く対照的な凌也の笑顔。

女子たちは、逃げるように教室を出ていった。

・・・

「誰が助けてなんて言った?」

内心ホッとしてるくせに・・・

嬉しかったくせに・・・

口から出たのはそんな言葉。

その時、タイミングよく、チャイムが鳴った。
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