「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「だから! ブサイクなのはこの手が……」

言い返そうとしたら、途中でそれを遮るように再び合わさった唇。


今度は食むようにきた。そのままそれは濃厚に、身も心もとろけさせるほど情熱的なものに変わる。


「ベッド行く?」

ほんの少しの隙間を作って、甘く掠れた声で浩平が言う。

行きたいけど……。

もう身体に力が入らないんです。てか、早く左頬の痛みから私を救ってください。痛さと気持ちよさのミスマッチが、やみつきになりそうです。


「せっかく来たんだから、クララにも会ってけよ」

まるで来訪者に自分の子どもを会わせるようなノリで言って、浩平はニッと意地悪く微笑む。ああでも、浩平の息子には違いない。って、何考えてんだ、私。


ようやく私の頬から手を放し、骨抜きになってダラダラな私の身体を、浩平は軽々と抱き上げた。




薬師丸杏奈、もうすぐ米山杏奈になります。


私はこの、甘くて、厳しくて、器の大きい『ブサメン』に――

一生涯、恋い焦がれ続けることでしょう。




つづく……。
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