マー君(原作)
「なあ、上田・・・・・・」
無駄だとわかっていながらももう一度呼び掛けてみる。
だが、返事はない。
良一は横顔に夕日を浴びながら、じっとしている。
しかし目は開いたままだ。まるで何かを恐れるように目を開き続けている。
白い壁は夕日の光で微かに輝いて見える。
リノリウムの床が、淋しげに広がっている。
しかしその上を歩く者はいない。
上田良一はベットに、洋太はベット脇に立ち尽くしているからだ。
「・・・・・・良一、俺は間違えているのか? あいつから、ただ……逃げているだけなのか? あいつを忘れようと。
お前はどうなんだ? あいつを覚えているか? あの頃を――」
ようやく出た言葉は今にも消え入りそうだった。
洋太は良一の姿に哀れみを感じずにはいられなかった。
良一は首と左足に固そうなギブスをはめ、ぼんやりと天井を見上げている。
頭に包帯が巻かれ、網帽子を被っている。
他にもいくつか怪我があったが、目に留まる大きな怪我はそれら三点だ。
話では自室の窓から飛び降りたそうだが、よく生きていられたものだ。
もう少し当たり所が悪かったら命を落としていたかもしれない。
だが--。
良一は確かに生きていた。
しかしそれは肉体的であり、心は死んでいた。
虚ろな目は天井から離れない。そこに何かがあるわけでもないのに、じっと一点だけ見つめている。
無駄だとわかっていながらももう一度呼び掛けてみる。
だが、返事はない。
良一は横顔に夕日を浴びながら、じっとしている。
しかし目は開いたままだ。まるで何かを恐れるように目を開き続けている。
白い壁は夕日の光で微かに輝いて見える。
リノリウムの床が、淋しげに広がっている。
しかしその上を歩く者はいない。
上田良一はベットに、洋太はベット脇に立ち尽くしているからだ。
「・・・・・・良一、俺は間違えているのか? あいつから、ただ……逃げているだけなのか? あいつを忘れようと。
お前はどうなんだ? あいつを覚えているか? あの頃を――」
ようやく出た言葉は今にも消え入りそうだった。
洋太は良一の姿に哀れみを感じずにはいられなかった。
良一は首と左足に固そうなギブスをはめ、ぼんやりと天井を見上げている。
頭に包帯が巻かれ、網帽子を被っている。
他にもいくつか怪我があったが、目に留まる大きな怪我はそれら三点だ。
話では自室の窓から飛び降りたそうだが、よく生きていられたものだ。
もう少し当たり所が悪かったら命を落としていたかもしれない。
だが--。
良一は確かに生きていた。
しかしそれは肉体的であり、心は死んでいた。
虚ろな目は天井から離れない。そこに何かがあるわけでもないのに、じっと一点だけ見つめている。