マー君(原作)
そんな良一を見ていると、洋太は悲しくすら思えてきた。

何も言わない人形のような良一に−−。

洋太は窓から射す眩しい夕日を見つめた。

もうじき日が暮れるのだろう。遠くで烏の鳴き声が聞こえる。

そんな中、ふと思ったことを呟いた。

「俺、ここに何しにきたんだろう・・・・・・今更何を言いに、来たんだろう」

無償に悲しくなった。何故か目の前がぼやけて見えた。



「あのー」

誰かの呼ぶ声で、洋太は我に戻った。

「あ、はい?」

突然のことで声が上擦える。

見ると目の前に女の子が立っていた。

彼女は不審そうにこっちを見ている。

整った顔に綺麗なショートヘアー、ジーンズにラフな上着をきた女性。

そこでようやく洋太は全て理解した。

と、同時に女の子が尋ねてきた。

「あのー誰ですか? もしかして今日取材の約束していた人ですか?」

洋太は目の前の女の子を見据えた。

まだ良一の残像が見えたが、無理矢理掻き消した。

こう言いながら。

「はい、怪奇出版の葛西洋太と申します」

そう、これは仕事なのだ。

迷いは何の答えも生み出さない。
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