マー君(原作)
ドクン、ドクンと鼓動は落ち着きを忘れて、常に危険を感じさせる。

勝田は目を大きく開き、向かいに建つ高層ビルを睨んだ。そのビルには数え切れない程の窓が日の光に反射して、眩しかった。

「これだ、これが! 私が望んでいた世界だ」

両手を広げ、大きく息を吸う。胸が大きく揺れ、全身に力が満ちていく。

そう、私が望んでいたのは−−。

スリルだ。

この退屈な世界から抜けることを、望んでいた。だから死にたいと思っていた。退屈から逃れるために。

だが、今は違う。私は生きてここに立っている。希望を抱いて。

そもそもが間違いだったのだ。安泰なくしての退屈はありえない。ならば、身を危険に晒せばよかったのだ。私は今日から生まれ変わる。

新たな自分に――。

「そう、今日から私は新たな生きる希望を抱いたのだ。この退屈な世界から抜け出せる。マー君のおかげで」

例え、マー君に殺されようが、本望だ。今のこの感覚の中で死ねるなら――。

私がマー君に殺される−−それは私が望んだこと。
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