マー君(原作)
「マー君のAIは人間の意識そのものだ。

コンピュータウィルスはそのコンピュータ内のファイルに自動的に感染する方法で自己増殖する。わかるか?簡単に言えば一つの記録というファイルが汚染されれば、瞬く間に他のファイルに移っていく。

このウィルスはその感染対象が人間の脳に変わっただけだ。人間の脳にもいくつものファイルがある。それをこのウィルスは破壊し、侵食していくのだよ。

しかしだ、人間に対してコンピュータウィルスを感染させるなど普通はできない。

そこで、考えられたのがウィルスに人間の意志そのものを載せるという方法。目には目をと言うだろ?

その結果できたマー君は人間の負の思念態とも呼ぶべき存在となった。

つまり、ネット上をさ迷う人間、生きている人間と変わらないのだよ。それに……マー君の本体となっている人間もまたまだ生きている。そいつについては後で説明する、今は」

吉沢が両手を広げて、大声で言う。

「だからマー君はネット上の殺人鬼と呼ばれている。これでわかっただろう。マー君は亡霊ではない。生きた人間の意志だ。

そして……ここにいる奴らはマー君という恐怖に屈した弱者だ」

「それがー感染する奴と、しない奴の理由か?」

洋太は両手を延ばしている吉沢に聞いた。

すると、彼は初めて笑った。大声で。その声に応じるように周りの檻から叫び声がする。

「正確には現実逃避が原因だ。マー君に対する恐怖は引き金にすぎん。

わかるように言うと、ここにいる奴らは現実から逃げたのだよ。

ネットの世界にな」

洋太はこれが夢であると信じたかった。

だが、耳に響く感染者の雄叫びはリアルだった。

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