マー君(原作)
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人間とは不思議な生き物だ。命の危険に晒されると急に変容する。

それまで死にたいと思っていたのに、生きたいと思うようになる。

その力は絶大だ。時として運命を変える力とさえなる。

死の恐怖は抗うことを許さないが、一方で生きる意味、大切さを実感させてくれる。

そう私は新しい自分に生まれ変わったのだ。

こんな充実した日はないだろう。仕事を終え、家に着いてもまだ力がみなぎる。

それも命を狙われているということが要因なのだろうが。

「ふぅ、働いた、働いた。まるで麻薬でもやってるみたいにハイな気分だ」

キッチンの冷蔵庫からキンキンに冷えた缶ビールを取り出し、プルトップに指をかけ勢いよく引く。

ブッシュゥゥ――ッ! シュワァァッ!

一気に缶ビールの飲み口から白い気泡が溢れ出してきた。

どうやら興奮しているのは私だけではないようだ。ビールまで活気づいている。

こんな日に飲むビールは最高の味だろう。
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