マー君(原作)
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「部長! これお願いします」

昨日の若い男が資料を持ってデスクにやってきた。勝田は疲れぎみな目を瞬きさせながら、資料を受け取った。

昨夜のあれ以来、一睡もできなかった。常にマー君に見られているような気がして気が落ち着かなかった。

あれが、嘘であれ、本当であれ、警戒するにこしたことはない。

そのきっかけを作ったのは他の誰でもない、自分なのだから。

元から、そのつもりで自殺支援依頼をしたのだ。このスリルを味わうことで、自分を変化させようと試みた。

その結果だ。

悔いはないが、恐怖はある。

死という逃れられない絶対的な存在が迫ってくる。

だが、それも朝までだった。今やあまりの緊張感に体がもたず、倒れそうだった。

が、倒れた瞬間もう二度と起き上がれない気がした。そこで人生が終わりそうな気がした。全て失いそうな気がした。

このスリルも感情も何もかも。

もはやこんなスリルに耐えられそうにない。常に命を狙われている気がしてならない。

一時も気を抜けない。
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