マー君(原作)
<14>

「と、父さん?」

凪は父親の前で立ち止まり、静かに呼ぶ。父親は白い仮面を向けたまま話す。

「さぁ、もう危険はない。父さんの縄を解いてくれ」

「本当に? 本当に、父さん? 本当の父さん?」

「何を疑ってるんだ? 信じろと言ったのを忘れたのか? 凪もう終わったんだ。だから、父さんを−−」

信じろ。

確かにそう言われた。だけど−−。凪は首を左右に振って後ずさった。

「ち、違う! こんなの、父さんじゃあない!」

「凪信じるんだ。父さんを信じて−−」

「やめろ! やめろやめろやめろやめろっ! 父さんの振りをするな!」

凪は頭を抱えながら、後ずさった。信じろ、そう言われても信じられなかった。父親の言葉が全て嘘に聞こえる。声が、言葉が−−。

「−−なんだよ、騙されないか」

え?

凪は顔を上げ、父親を見た。彼はさっきと同じく仮面をつけた顔をこっちに向けていたが、声が違った。マー君の声だった。

「あーあ、せっかく感動の再会を演じたのに、駄目だなもう」

そう言い父親は体を左右に振って縄を解こうとした。椅子が激しく揺れる。
< 449 / 604 >

この作品をシェア

pagetop